「ペットのお風呂やシャンプーは必要なのでしょうか?」という質問は、よく聞きますが、自然界ではどのようにしてスキンケアーをしているのでしょうか?動物は、皮膚や被毛も特有の特徴や構造があるはずです。そして、そのスキンケアーの手段として「水浴び」、「砂浴び」、「グルーミング(口で梳いて清潔にする)」を行っているはずです。まずは、飼育している動物の生態、皮膚や被毛の構造や生理をよく勉強することが大切になります。皮膚や被毛の特徴とハムスター、ウサギ、フェレットの具体的なスキンケアーを考えてみます。
皮膚の構造と生理
(1)皮膚の構造
皮膚は表皮と真皮、被毛や腺組織などの付属器、そして、その下の皮下織に区分されます。
皮膚と付属器の模式図(Kardong,1998)
- 表皮:皮膚の最表層で、重なって並んだ細胞の層で形成され、動物によって厚さは異なります。その表皮の細胞の入れ替わりはイヌで約3週間とされています。外部の有害物質に対するバリアーとして働いています。
- 真皮:真皮は表皮の下にある緻密な層で、その間にさまざまな細胞が分布し、表皮の付属器(毛根や皮脂腺など)や血管、リンパ管、神経も含みます。。
- 皮下織: 皮下織は結合織で構成され、神経、脂肪、血管を含みます。その中には皮下脂肪も含まれ、クッションや充填材、断熱材としての役目があります。
- 付属器:糸状の角質構造物で、根部は真皮に付着しています。そして皮脂腺は脂腺と汗腺があり、脂腺は脂肪を分泌して皮膚や被毛をコーテイングし、防水性を高め、そして臭腺として臭いつけに役立つこともあります。汗腺は汗を分泌し、体温を調節します。動物によって脂腺や汗腺は発達したり、退化しています。
(2)皮膚の生理学
皮膚の役割は膨大なものがあり、単に体表に位置する組織としてではなく生体最大の複合臓器ともいえます。皮膚の主な役割として次のようなものがあります。
- ●生体組織の保護
- 皮膚は生体と外界が接触する部位の大部分に存在し、外界からの各種の刺激(光・熱・力・微生物など)に対して抵抗を示します。
- ●温度調節
- 被毛や皮膚血管の調節によって体温を調節します。
- ●感覚器
- 皮膚には神経が存在し、触覚、圧覚、痛覚、温度などの感覚器でもあります。
- ●分泌
- 付属器官である分泌腺から、様々な分泌物を出し、皮膚の働きなどを助けています。
- ●合成
- 日光によってビタミンDを合成します。
- ●付属器の産生
- 毛、表皮などのケラチン構造物を造り出します。
- ●免疫
- 異種蛋白を認識する能力があり、免疫担当器官の一つでもあります。
各動物のスキンケアー
(1)ハムスター
ハムスターは、乾燥地帯に棲息しているため、水分摂取が少なく、その水分を上手く活用できるような体の仕組みを持っています。被毛は全身に均等にはえ、皮膚にみられる臭腺はゴールデンハムスターでは脇腹に1対、ジャンガリアンハムスターには正中の腹部に特異的にみられますが、ここからの分泌腺で被毛が汚れることはまれです。したがって、被毛の維持には飼育下でも砂浴びが適切です。細かい砂ほど皮膚の余分な脂を除去することができます。毎日行っても問題はありません。そして、臭腺の分泌腺が過剰で、汚くみえることも時にありますが、多くの場合はあえて洗う必要がないでしょう。
(2)ウサギ
ウサギは換毛が著しくみられる特徴があり、スキンケアーはグルーミングを行い、綺麗にします。しかし、過剰なグルーミングによって被毛を胃の中に詰まらせ、「毛球症」になりやすいのです。現在のカイウサギはヨーロッパアナウサギが原産とされ、自然界では水の中に入ることは少ないです。また、ウサギの被毛は特に密で柔らかく、撥水性を持つ特徴があるため、濡れた後に乾燥させることが、イヌやネコと比較して困難です。したがって、スキンケアー以外の理由もあり、頻繁にブラッシングをしてあげることが重要になります。特に長毛種などには毎日行うことが重要でしょう。
換毛中のウサギ
(3)フェレット
フェレットの体臭は、麝香臭で特異的な臭いがします。その原因は身体全体にある皮脂腺そして肛門腺などからの分泌物によるものです。汗腺が少ないことも特徴の一つです。また、フェレットは季節繁殖動物であるために、季節によってこれらの分泌腺や被毛の活動が異なります。特に皮脂腺は長日より短日に活発になります。その結果、脂っぽくなったり、黄色く変色することがあります。被毛の色彩も短日では明るくなる傾向がみられます。イタチの仲間は水の中にはいることもあリ、フェレットはシャワーや入浴することも可能です。飼育下では臭いの問題もあるために、定期的に行うことが必要ですし、あるいは個体や季節によってシャンプーを使い分けたり、入浴の頻度を変える必要があるでしょう。入浴やシャワーは皮膚の細胞の入れ替えを考えると約3-4週間くらいで良いと思われますが、個体差あるいは季節によって異なります。
以上のように、各動物の生態や特徴に適したスキンケアーを行う必要があります。不適切なケアーを行うと、過剰な入浴により、かえって皮膚の状態を悪化させたり、病気あるいは高齢の動物では、動物自身が弱ることもあります。ましてや人用のシャンプーを使用すると、人と動物の皮膚のバリア構造が異なるために、脱毛や炎症を引きおこす例がみられることもあり、注意が必要です。また、多くの動物には換毛(かんもう)といって、被毛の抜け替わりがみられます。多くが夏毛あるいは冬毛への移行時にみられ、この時期は屋内飼育をしていると、毛が舞ったりして掃除が大変になりますが、動物自身のケアーも入念に行って下さい。