ペットの高齢化に伴い、ヒトと同様に視力が悪くなったエキゾチックペットの話しもよく聞くようになりました。しかし、動物は視力にのみ依存しているわけではなく、他の感覚器も駆使して生態系の中で生きていけることができます。一方、飼育下の動物は視力の低下に伴い、様々な症状が飼い主である我々、人間の目にとまります。動物の視力を測定することは難しいですが、視力障害による様々な行動異常からある程度は推測することができます。そのような行動を注意深く観察し、飼育環境を整えることによって、視力の低下した動物たちの生活の質を向上させてあげることは可能でしょう。今回は動物の眼球の構造・生理および眼科疾患などを解説しながら、視力障害について解説していきたいと思います。

動物の眼球の解剖・生理

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真猿類(タラポアン)
(昼・夜行性の大別)
 眼は動物の体の中で特徴的な感覚器であり、その構成はカメラに似て、動物が周囲を知覚できるようになっています。例えば光の入射によって大きさが変化する瞳孔はカメラの絞りとなり、水晶体はピント調整を行うレンズの役割を担い、フィルムである網膜上に視覚情報を結像します。しかし、動物ごとの眼の特徴は、様々な生態学的理由により変化しています。各動物の形態学的、生理学的変化に大きな影響を与えた要因として、その動物が生活する場所の明るさが大きく影響したと考えられています。このことから、光の強さと持続時間に対する順応により、脊椎動物を
1)昼行性(昼間に活動する性質)
2)夜行性(夜間に活動する性質)
3)リズム性のないもの(昼夜関係なく活動する性質)
と、大きく三つに分類されています。
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ラット
  1. 昼行性動物は日中に活動し、活動時に最適な視力をもつものの夜間の視覚は弱いです。昼行性動物の代表例として、ウミガメ、ヤマカガシなどの爬虫類、多くの鳥類、多くの真猿類、リス、プレーリードッグなどのげっ歯類などがあげられます。
  2. 夜行性動物は夜間に活動し、わずかな光の下で良好な視覚をもっています。多くの動物は夜行性であるといわれており、このグループに含まれる動物は、朝夕の黄昏時の明るさを上手に利用して薄暗い時に活動します。夜行性動物の多くは、眼球内にタペタムと呼ばれる光を反射する組織を含んでいます。タペタムは眼に入った光が網膜を通過後、再び光を網膜に反射させて光の感受性を高めています。イヌやネコの眼が夜に光るのはタペタムのためであり、緑、青、黄色といった特有の眼からの反射があります。ちなみにタペタムを持たない動物(ヒト、サル、ブタ、ウサギ、ラット、マウスおよびアルビノの動物など)は赤ないしオレンジ色から灰色の反射を呈します。夜行性動物の代表例として、コウモリなどの翼手類、多くの爬虫類、ハムスター、ラット、マウスなどのげっ歯類、一部の有蹄類および肉食動物(イヌ、ネコ)があげられます。
  3. 多くの有蹄類、肉食動物はリズム性のないものに分類され、昼も夜も等しく活動します。
以上三つの分類は、さらに動物の採食行動により被捕食動物と捕食動物といった具合に細かく分けられます。また、これらの分類は大きく分けたものであり、動物の種類(哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類)が同じであっても、生活環境など様々な要因によって眼の特徴は異なります。

眼球の構造


図:イヌの眼(作成中)
図:爬虫類の眼(作成中)
図:鳥類の眼(作成中)

 イヌ、爬虫類、鳥類の眼球構造図です。各動物とも角膜、強膜、虹彩、水晶体といった基本構造は同じですが、動物種によってその形態や他の細かい部分での構造の違いが見られます。この違いは、動物の生活環境によるものと考えられています。

各動物の好発眼疾患と、各眼疾患時の症状(行動性を重要視して)

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コザクラインコの結膜炎
 結膜炎や、角膜の損傷など眼に痛みを伴う疾患では、眼を前肢でこすったり、床やソファーなど物にこすりつける仕草が観察されます。特にハムスターやウサギは結膜炎が好発し、そのような仕草が多くみられ、鳥類は止まり木に頭をこすりつける仕草がみられます。
 緑内障は眼内圧が正常な限度を超えて長時間にわたり上昇した結果として生じる、一連の眼障害をきたす疾患です。眼障害の中でも、眼球の拡張によって強い鈍痛を感じることが多くみられます。そのため動物は、うずくまったり、食欲がなくなり、また眼圧のコントロールができない場合は視神経が障害を受け、不可逆的な視覚の消失がみられます。エキゾチックアニマルの多くは痛さによるストレスに弱く、このような症状が急速に致死的経過につながります。
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ウサギの白内障
 白内障は水晶体または水晶体嚢の混濁を示す疾患です。水晶体の混濁の程度や部位により、視覚は低下し動物は行動範囲が狭まります。

 視覚障害は眼疾患の部位や程度により様々な行動を示します。眼の中心部位に障害をもつ動物は近くのものを認識できないことがあります。例えば、食餌をしようと食器に近づいた時、急に鼻を嗅いで食器を探し出したり、階段などの段差(特に階段を下りることを躊躇します)を怖がる、そして積極的な行動範囲が狭くなるようになったりします。このように近くのものを認識しづらくても、少し距離をおいた物、例えば広い部屋で遊んでいる時に、動物は遠くの物を認識するため、飼い主さんは動物の視覚に関して、見えているのか分からないといった認識をされる場合があります。また、病気によっては暗い時に視覚が弱くなります。これは薄暗い時の視覚が弱くなり、例えば暗い部屋での散歩時に物にぶつかったり、突然、階段から落ちてしまうなどといった行動もみられます。
 完全に視覚を消失した動物では、物にぶつかるといった症状とともに、視線が前方に定まらず、空中を仰ぐ行動がしばしば観察されます。昼行性のサル、プレーリードッグなどにそのような行動が多いです。しかし、両眼の疾患はこのような行動により視覚障害を認識できますが、片眼の障害時は困難となります。
 このように視覚は動物にとって大切な感覚です。しかし、夜行性であれば、視覚に依存する割合が少ないためか、盲目であっても、それが感じられないように生活をすることもできます。特にハムスターなどの夜行性のげっ歯類は、ほとんど飼い主さんも分からず,一生を過ごしてしまうことも多いです。視覚以外にも、嗅覚、聴覚、嗅覚、触覚を駆使して上手に生活する動物もあり、人以上に環境に適応できることも動物の素晴らしい能力でもあり,自然の摂理なのかもしれません。
文章共同執筆:小野 啓(パル動物病院)