多くの動物に過ごしにくい夏は、飼育者の配慮により、快適に過ごすことが可能となる。夏は暑さ以外にも、食餌の腐敗、寄生虫や皮膚病が好発するなどの問題も生じやすい季節ともいえる。これらの飼育下でのマイナスとなる影響をどのように回避させるかは、永遠の課題である。ペットの夏の健康管理について概略をする。
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イグアナ
中南米原産のイグアナは、真夏の35℃の環境が快適である。

暑さによる疾病

夏には熱射病や日射病という体温調節の失宜による疾病以外にも、感染症の好発あるいは食餌の腐敗による消化器疾患という要因がペットに悪影響を与える。

(1)熱射病/日射病

動物によって暑さに強弱がみられる。特にウサギ、フェレットは暑さに弱いため要注意である。もちろん飼育ケージには温度計の設置は必要で、可能ならば最高-最低温度計の使用が理想である。ウサギ、フェレットは汗腺が未発達であり、ヒトのように汗を出して体温調節を行うことができないため、必然的に熱射病や日射病になりやすい。

○熱射病/日射病の症状

  • 高体温
  • 呼吸促拍
  • 全身衰弱
  • 尿や便の失禁

○応急処置

  • 身体全体に冷水を浴びせ、濡らしたタオルで全体を包む
  • アイソトニック飲料などをなめさせたり、飲ませる
夏はペットも海や山へ連れてドライブを行う機会も多い。車内にペットを残したりすると、数分間でも危険な状態になりやすい。また、ベランダなどでの飼育も同様であり、風通しのよい涼しい場所に移動する必要がある。留守時は、閉め切った部屋に閉じこめることも危険である。

(2)食餌

残飯も「もったいないから」という理由から、次回の食餌まで保管するようなことがあれば、腐敗しやすくなり、食中毒などの消化器症状も起こりえる。高湿度でもあり、暑さの厳しいこの時期は、食物の鮮度も落ちることはいうまでもない。残った場合、思い切って捨てる勇気も必要である。

(3)疾病

 夏は湿度も高くなり、細菌の増殖が顕著になり、皮膚病を引きおこしやすい。また、フィラリアをはじめ、ノミやダニなどの寄生虫の感染もみられる時期であり、疾病の好発しやすい時期でもある。特に屋外へ外出する機会が多いフェレットは注意する。

各動物の夏季管理

(1)ハムスター

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暑さで衰弱したジャンガリアンハムスター
 ハムスターは一見すると暑さにも強く感じるかもしれない。本来、寒さに弱い動物であるが、野生では夏季は深い巣穴の中で暑さを耐えしのぎ、快適な生活を営む。決して暑さに強い動物というわけではない。
 一方、飼育下では飼育者がケージを設置する場所によって温度が決定される。また、設置する場所によって、昼間と夜間とで大きく温度差が生じるため、入念に考慮する必要がある。窓際での直射日光は暑くなりすぎることがあり、昼夜の温度差が生じることもハムスターの体調不良の原因になる。一般的な飼育温度は20-26℃、湿度40-60%である。可能であればエアコンや扇風機などの空調設備で温度調節を行うことが理想である。
 なお、空調設備の送気に動物の身体が直接に当たらないこと、そして部屋の中での空気の対流を考慮する必要がある。冷風は部屋の下層に溜まるため、冷えすぎないように注意する。これらの空調設備はヒトと同様に身体への害も報告されており、空調機械を使用しない方法も検討されている。ケージの種類も金網タイプのものを使用し、床材や巣材の量を減少させることもひとつの方法である。最近は小動物専用の保冷剤も市販されているため便利になった。このような保冷器具を使用しない場合は、風通しをよくすることを考慮する。南向きの部屋は避け、少しでも室温が低い部屋に、ケージを設置する。

(2)ウサギ

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ウサギの熱放散を行う耳介の血管
 ウサギは暑さに弱く、寒さに強い動物である。汗腺が未発達であり、耳介の血管から熱を放散する仕組みをもつ。一般的な飼育温度は20〜28℃、湿度40〜60%である。環境温度が28℃以上では身体の防御機能が働かず、熱射病や日射病になりやすいことで有名である。直腸温度が40.5℃以上では神経症状もみられ、致命的になる。屋内飼育では、エアコンや扇風機などの空調設備を使用して室温を保つことが簡単である。しかし、送風が直接動物の身体に当たらないようにする。空調設備を使用しない場合は、細心の注意が必要で、少しでも室温の低い部屋にケージを設置し、換気扇を回したり風通しを良くし、空気を循環させ、直射日光が入らないところに設置する。また、冷凍ペットボトルや氷嚢をケージ横に設置するなどの工夫もよいであろう。屋外飼育においても、風通しがよく、湿気の無い日陰のあるところにケージや小屋を設置する。

(3)フェレット

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フィラリアの寄生により腹水の溜まったフェレット
 フェレットは高温に弱い動物で、ウサギと同様に汗腺が未発達で、32℃以上の室温に は耐えられず、熱射病や日射病になりやすい。フェレットの多くは室内飼育であり、特に夏の暑さには十分に注意しなければならない。一般的な飼育温度は15〜25℃、湿度は45〜55%である。直射日光にあたり、飲水ができないような状態であれば約27℃でも危険になる場合があるという。 室内の温度調節にはエアコンや扇風機などの空調設備が理想である。夏の暑さに弱いフェレットには専用の栄養剤が各種市販されているので、定期的に与えることもよいであろう。ケージの床にすのこを使用したり、メッシュでできた通気性の良いハンモックなどを使用すると湿気防止にもつながる。
 そして、フェレットでは夏に最も注意することは、蚊の対策である。蚊を媒介として他の動物からフィラリア症を感染させられることがある。予防は蚊の発生時期に合わせて(5月から11月くらいまで、地域によって異なるので注意する)、予防薬を服用する方法が適切である。一度感染が成立すると致命的になる疾病であるために必要な処置ではあるが、残念ながら現在、本邦ではフェレット専用の薬剤が認可されていないため、犬用の薬剤を服用することになる。投与の意義や効果などは獣医師と相談するとよいであろう。

(4)金魚・熱帯魚

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プレコストムス
 金魚は水棲動物であるが、やはり季節によって水温が変化することにより、体調を崩すこともある。熱帯魚も「熱帯」という名がついているが、水温は高いときで25℃から30℃までである。室内飼育では人為的な冷房や暖房による急激な温度変化で調子が崩れるが、自然な温度変化では問題は少ない。しかし、気温が30℃を超える日が続くと、水槽の温度も連動して上層するため、水槽を移動するこも必要となる。移動できない場合は、水槽の下に空間を設けるなどして、風通しをよくする配慮が必要である。
 他にも蛍光灯などの照明も水温を上昇させる原因になり、水槽から離して設置するか、可能な範囲で消灯する。専門店では水槽用の扇風機(冷却ファン)や水槽専用のクーラーなども販売している。締め切った部屋や、直射日光が当たる場所では、水温が40℃にもなることがあるため注意する。
 水温が上昇すると、魚の必要酸素量が増大する一方、水中溶存酸素量は減少するため、呼吸困難に陥り、魚が水面に鼻を上げるような現象がみられる。
 屋外飼育での池では、水槽飼育以上に日覆いと風通しには充分な配慮が必要となる。  水温が高いと金魚は基礎代謝が活発になり、通常よりも少し多めの餌を給餌する。なお、この季節に病気にかかると、症状の進行が早い場合が多くある。毎日の細かい観察が大切である。

(5)昆虫

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カマキリ
 昆虫には様々な種類が存在するが、カトムシ、クワガタ、あるいはスズムシやコオロギなどが一般的には飼育されていると思われる。日本のカブトムシは、日本のほかに朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン、インドシナ半島に分布し、クワガタも世界中に約1000種類存在し、本邦でも30種類以上が棲息している。これらの虫は夜行性であり、夜になると樹液などを吸いに樹木に集まる。したがって、ケージは直射日光には当てないように注意する。暑さに弱いため、風通しのよい場所で飼育することを推奨する。幼虫は土壌中の生物であり、もちろん、日光には当てないようにする。
 スズムシは本邦の本州東北地方南部より、沖縄・台湾・中国・東南アジア一帯に棲息している。日光を極端に嫌い、昼間は草むらの中の石の下などにもぐり込んで身を守り、夜になるとエサを求めて行動する夜行性の昆虫である。もちろん直射日光を当てないように注意が必要となる。ケージの周りを暗くしたり、室温が高くならないように空調設備を調節するか、または涼しい部屋へケージを移動するべきである。


 夏は一年のなかで、動物の種類によっては冬以上に過ごしにくい季節でもある。各動物において生態が大きく異なり、野生でも夏の過ごしかたは十分に知られているわけではない。さらに、飼育下では動物は制限された環境に限定されるため、自ら危険を回避することができない。飼育者は、各飼育法を習得し、安全で快適な生活が送れるよう工夫することが求められる。動物にとって快適な季節である秋までの辛抱である。