【不正咬合】
ハムスターの切歯は常生歯といってイヌ・ネコと異なり、伸長します(臼歯は伸長しません)。不正咬合は、生まれつきでおこる場合と、金網のメッシュのケージで飼育した時にケージを齧る癖から、噛合に異常が生じ、伸長する病気です。過長した歯は定期的にカットします。
切歯の不正咬合がみられるジャンガリアンハムスター(写真:霍野 晋吉)
【頬袋脱】
頬袋脱とは、頬袋が口の外に出てしまうことです。細菌の感染や炎症、過形成、腫瘍などが原因と考えられますが、頬袋を引っ張っている頬袋張筋の損傷によっておこる場合もあります。
頬袋が逸脱したジャンガリアンハムスター(写真:霍野 晋吉)
【ウェットテイル】
下痢で肛門、陰部、尾の被毛が濡れることから「濡れた尾」という意味でwet tailと呼ばれています。正式には伝染性過形成性回腸炎といいます。細菌、真菌、ウイルス、寄生虫などによる感染、不適切な食餌、ストレス(離乳期、過密飼育など)の原因が単独あるいは合併して発症すると考えられています。離乳したての幼体や、長毛の個体に多くみられ、2、3日で急死することもある恐ろしい病気です。早急に治療を行う必要があります。
下痢で肛門付近が濡れているウェットテイル(写真:霍野 晋吉)
【直腸脱】
肛門から直腸が出てしまった状態のことです。慢性の消化器疾患に続いておこることが多いです。直腸の粘膜のみが出ている場合を直腸脱といいますが、ハムスターの場合は腸が重なって内臓を巻きこんで出ている場合もあります(腸重積)。非常に致死的な状態です。
重積した腸が肛門から逸脱したゴールデンハムスター(写真:霍野 晋吉)
【心不全】
1歳半以上のハムスターに多い疾患で、呼吸困難で苦しくなります。老齢性の疾患であり、遺伝、環境、食餌、併発病などにより病気の進行は異なります。投薬以外にも低カロリー、低脂肪、低塩分、高線維質の食餌、運動制限なども必要と考えられています。
心拡大が認められるゴールデンハムスターのX線写真(写真:霍野 晋吉)
【卵巣子宮疾患】
1歳以上のメスのハムスターに多くみられます。性ホルモンの不均衡や感染などが原因に関与していると考えられています。初期の症状は陰部からの出血であることが多いようです。陰部からの排膿、また脱毛がみられることもあります。実際には卵胞嚢腫、卵巣腫瘍、子宮腫瘍、子宮内膜過形成、子宮蓄膿症、子宮粘液腫、子宮水腫と診断されます。投薬で改善する場合もありますが、可能なら卵巣子宮摘出術が望ましいと考えられます。
陰部からの出血(写真:霍野 晋吉)
【腫瘍】
高齢のハムスターに多くみられます。腫瘍の種類は品種、年齢、性別によって大きく異なります。腫瘍の発生には、食餌(カロリー、蛋白質など)、内分泌、環境(温度、湿度、光など)、遺伝、微生物(ウイルス、腸内細菌など)が考えられます。ハムスターでは皮膚の腫瘍、特に角化上皮腫、汗腺腫、細網細胞肉腫、線維肉腫、扁平上皮癌、乳頭腫、皮脂腺腫等がよくみられます。もちろん内臓や骨の腫瘍も発生します。抗癌剤も使用可能ですが、可能な限り外科的な手術が望ましいと考えられます。
扁平上皮癌(写真:霍野 晋吉)
【麦粒腫】
ジャンガリアンハムスターに多くみられます。マイボーム腺という涙腺、あるいは睫毛の毛根部分の細菌感染が主な原因です。結膜やまぶたの部分に白色のしこりが認められます。点眼で改善する場合もありますが、外科的に排膿することもあります。しかし多くは再発します。
上眼瞼にみられた麦粒腫(写真:霍野 晋吉)
【ニキビダニ症】
哺乳の時にニキビダニ(アカラス、デモデックス)が母親から子供に伝播して、生涯皮膚に常在するといわれています。発症は通常1歳以上であり、ストレス、栄養不良、感染症などによる皮膚の免疫能力の低下、また腫瘍、内臓疾患を原因とする体力低下が大きく関与しています。身体の背中側の腰から臀部、大腿部にかけて脱毛、薄毛がみられます。免疫の低下や基礎疾患が関与していることが多いので、完治しにくい場合も多いです。
腰背部に脱毛がみられるゴールデンハムスター(写真:霍野 晋吉)
ニキビダニ(写真:霍野 晋吉)